人民元レート急落の謎 (4)
夕べは 「中国は元安政策に踏み切る」 と言わんばかりの記事を新華社サイトで見つけて唖然としましたが、今日は逆向きの報道、外為市場でも人民元が対ドルで続伸しました。踏み切ると決まった訳ではなさそうなので、中央経済工作会議の結果を待ちましょう。
人民元レート急落の謎 (4)
何が起きている?
本9日のネット報道をあさった結果です。
(1) 目を惹きそうなイシューのわりに、あまり取り上げられていない。報道管制(ないし 自粛)がかかった気配があるが、あるにはある記事をざっと見た限りでは、内容は概ね以下の点で共通している。
? 今回の 「貶値」 は短期的な現象と見るべき、中長期的に元安が続くとは考えにくい。
? 輸出振興のための元安政策は効果がない、貿易紛争を誘発、資本流出を招く等のデメリット があり、上策と言えない。(やっと資本流出の懸念に触れてくれました!)
? 対ドル・レートだけ見て 「元安だ」 と騒ぐのは当を得ない見方であり、人民元はユーロや新興 国、東アジア (日本以外) に対しては軒並み上昇したままである。
? これまでの20%の引き上げと目下の内外経済情勢に照らしてみると、人民元レートは概ね 均衡点に到達しつつあると見るべき。今後は、「上がりもすれば下がりもする」 双方向の変動 になっていくだろう。
? そのためにも市場介入を減らして為替をもっと市場化する改革(市場参加者の増加など)を 進め、健全なレート形成が可能な環境を整えるべき。
いずれも、もっともな論調だ。上記? については、既に本シリーズ2回目で論じた点を参照願いたい。? については市場介入が減るか否か、今後発表される外貨準備増減の数字を見る必要がある。中国とそれ以外の国の貯蓄・投資バランス等が絡むので 「20%も上げたから、そろそろ均衡点だ」 と一概には言えない。? は中国が今後進むべき道として正しいと思う。「今後の国際通貨体制のあり方」 で述べたように、米国債の購入量漸減に本当に繋がる改革を実行できれば、中国の国益にとっては意義大だと思う。
さて、読む者を唖然とさせた夕べの記事と上記の記事は、論調が概ね正反対だ。政府部内も 「甲論乙駁」 のため、報道もバランスを取って 「日替わりメニュー」 (昨日は元安肯定、今日は否定)で対応したのかもしれない。
今回の騒ぎの陰で、「人民元は上がることはあっても下がることはない」 という内外の“perception”を変えたいという当局の願望があると気付いた。1日の人民元急落はそのためのシグナルとして容認されたのかもしれない (どこまで意図的だったかは別として)。
いずれにしても 「人民元貶値」 で振り回されて、ちと疲れた。中央経済工作会議の結果は一両日中に公表されるだろうから、後はおとなしくそれを待つことにする。
平成20年12月9日 記
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