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中国経済ストック・テイキング3

昼飯時間の合間に急いでの投稿です。本当のショートコメント、書き足らないけど普通ブログはこれくらいの長さにするべきでしょうね(^_^;


中国経済ストック・テイキング3
金融微調整について、続ショートコメント



  昨日、温家宝総理が最近浙江省を視察した折りの講話でマクロ経済運営方針に触れたくだりが発表された。
  副題には 「確固不動として (原文:堅定不移地) 中央の経済発展促進方針・政策を貫徹・実現する」 という例のくだりがあって、「ああ、また 『総論』 を強調している・・・」 と思ったのだが、本文を読んでアレ!?と思った。

【昨日報道された講話】
目下、内外経済情勢は好転しているが、不安定・不確定な要因は多く、形勢は依然として複雑で厳しい。我々は今まさに前進なければ即ち後退を意味する天王山の時期にある。冷静なアタマを保ち形勢を見極め、共通認識を凝縮させ、思想を中央の形勢分析判断に統一させ、行動を中央の政策実現に統一させ、マクロ政策の方向を揺るがせずに堅持し、政策の連続性と安定性を保ち、積極的な財政政策と適度に緩やかな貨幣政策を継続実施し、国際金融危機に対する計画パッケージを全面的に貫徹・実現しなければならない・・・

  「確固不動として」 のくだりが消えたのだ。

【7月上旬の経済情勢座談会での講話】
・・・経済恢復の基礎は依然不安定で、国際金融危機によるマイナスの影響は依然弱まっていない、外需が大幅に落ち込む局面は依然続いており・・・・必ず、確固不動として積極的な財政政策と適度に緩やかな貨幣政策を実施し、国際金融危機に対する計画パッケージを全面的に貫徹・実現しなければならない・・・

【7月23日付け財政工作関係の会議での講話】
・・・いま我が国経済は緩やかな回復の天王山の時期にある。財政工作が直面する形勢は依然として極めて厳しい。確固不動として積極的な財政政策と適度に緩やかな貨幣政策を継続実施し、(国際金融危機に対する)計画パッケージを全面的に貫徹・実現しなければならない・・・

  チャイナ・ウォッチングには定石がいろいろあり、その一つが党中央や国務院の発表や公式報道の言葉使いを丹念に分析し、些細な言葉使い・用語の変化の背景に政策動態を読み取ろうとする 「訓詁学」 だ。筆者はこれがあまり得意ではないし、経済分野は政治分野ほど厳格な決まりがある訳でもない。しかし、公式報道を担う新華社のような組織には中央指導者の講話を伝える際に、一語一句をおろそかにしない伝統がいまも色濃く残っている。本当は温家宝総理が従前どおり 「確固不動として」 と言ったのに、編集現場でうっかり落としたとか、編集方針でカットしたとかいうことはあり得ない。この形容はなかったのだ。そして報道に当たっても 「落とすけど、いいですね?」という念押しは新華社と国務院との間で間違いなく行われていると思う。(勘ぐると、影響緩和措置として副題の中にだけ残した、とか(笑)

  この10日あまり、株価が大幅な (下落) 調整を経験したこともあり、「金融微調整は一段落した」 との観測が高まっている、以前引用した上海インターバンク・レートの高目誘導も一段落だ。むしろ、「微調整を超える政策修正 (すなわち利上げ) は当分ない、少なくともCPIがプラスに転ずる前は絶対ない」 という観測が改めて強まっている。
  その一方で、「耳タコ」 というほど聞かされた 「確固不動として」 という形容を温家宝総理が使わなくなった。このシザース(鋏の形)現象を総合して如何に推論すればよいのか ・・・ 筆者の直感はここ数週間取り沙汰されてきた 「総論」 と 「各論」 の温度差が解消、両者が 「合体」 したのだと見るのだが、果たして当たるか?
平成21年8月25日 記




 

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