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新秩序づくりに心意気示せ (朝日新聞インタビュー)

2月7日の朝日新聞に掲載されたインタビューを掲載します。2月20日の“The Asahi Shinbun”に英文版も掲載されましたので、そちらも併せてご覧いただければ幸甚です。


新秩序づくりに心意気示せ
2月7日朝日新聞 オピニオン「日中逆転」から



  2月7日の朝日新聞に掲載されたインタビューを掲載します。2月20日の“The Asahi Shinbun”に英文版も掲載されましたので、そちらも併せてご覧いただければ幸甚です。


新秩序づくりに心意気示せ

  日本はこの2?3年、「中国に技かれる」ことを意識下に織り込んできた。金融危機以降は、日本だけでなく先進国全体から中国など新興国へのパワーシフトが起きた。これでもう、「日中逆転」の心の準備は済んだと思う。
  国際ルールづくりを主導してきた米国の力が弱まる一方で、台頭する中国にはまだその穴を埋める意志も力もない。このため今後、環境や貿易などの政策協調は難航し、新しい秩序ができるまで時間もかかるだろう。そのなかで日本はどう生き、どんな秩序づくりを目指すのか。「逆転」後をどうするのか。それが本当の課題だ。

  まず今後も対等な日中関係を保つ心構えが必要だ。日本には国際関係を上下関係でとらえる人が多い。追い上げてくる中国を不快に感じる人は、「逆転」されると今度は「顔色をうかがう」心理に陥るおそれがある。東アジアが「中国一極集中」になるのか、周辺諸国も注視している。日本に心意気がないとみれば、一極集中が加速するだろう。
  これからの日中ビジネスは「双方向」だ。豊かな中国人観光客に期待して、日本政府もビザの発行基準の緩和を進め始めた。ビジネス用マルチビザの発給も緩和を急ぐべきだ。たとえば、過去数年に何度も入国し、違反の記録がなければ、招待状や保証書などの書類なしでマルチを出してはどうか。

  今後は中国が日本に投資する時代が来る。私は中国へ投資するファンドを経営している関係で、中国の地方政府や金融・企業関係者とよく接する。日本の技術や工場管理への評価は高いが、労働慣行などを合めて日本の国情への理解は低く、これでは投資の成功はおぼつかない。また日本も情報パイプがないので、投資のニセ情報にだまされる。ビジネスマンが頻繁に往来して付き合いが広まり、深まる体制づくりが必須だ。
  また、両国政府は投資や貿易を促進する「日中EPA(経済連携協定)」を「研究課題」のままにしているが、はっきり目標に掲げるべきだ。日本にとっての障害は農業問題や対米関係への配慮だ。 中国側にも自動車関税などの不安材料があるうえ、日本はどうせ障害を解決できないだろうと見越して本気にならない。
  だが、障害は克服できる。民主党政権が準備する農家戸別所得補償は、もともと高い関税障壁に頼らずに日本に農業を残す手段だ。関税が下がれば農産物が安くなり、中国や米国ともEPAを結べるようになる。そのためなら予算か数兆円かかっても引き合うと思うが、関税をどうするかの議論抜きに導入を進めるのは疑問だ。

  また、「日中EPA」に米国が不安を抱き、不快に感じるのではないか、という心配も無用だ。日中EPAが実現しそうだとなれは、米国は必ず入れろと言うし、それは日中とも歓迎だ。中国にとっても米国は日本以上に大事な国で、「日中枢軸」はありえない。日米中が参加…とオチは決まっているが、誰がどう仕掛けるか。日本が存在感をアピールしていくべきだ。(聞き手吉岡桂子)






平成22年3月21日 記




 

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