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反論の結び

「東大丸川知雄教授の批判に応える」第5回目です


 
    反論の結び
 
   本書「超大国・中国のゆくえ 4」に全体として感じたのは、前提とする認識やデータが旧すぎるのではないかということだ。2年前なら、拙著「終焉」に同じような批判をもらっても不思議ではなかった。発足して間もない習近平政権が2020年に2010年対比でGDPと国民の一人当たり平均収入をそれぞれ2倍にすると公約したのもその頃だからだ。
   しかし、今年2月に出たばかりの本書で、ここまでの楽観論を聞かされることは、正直言って驚きであった。中国は昨年以来、トップ習近平が先頭に立って「新常態」を訴え、昨年末には2015年のGDP成長目標を7.0%に下げ、現在進行中の13次五ヶ年計画のフレームワークづくりでは2016〜2020年の計画期間中の成長目標をさらに6.5〜7.0%の間に下げることを検討中だと言われる。丸川教授は、このような政権の姿勢を「潜在成長率を活かしきろうとしない愚かな政策だ」と評するのだろうか。
   ちなみに、現政権きっての改革派閣僚として、地方財政改革などを主導する楼継偉財政部長が「中国は今後5年から10年の間に『中所得国の罠』に陥る可能性が50%以上ある」と発言したという記事が1週間ほど前に出ている。
   楼部長はその理由として、「中国が老齢化社会に突入するのが早すぎるからだ」としつつ、「仮に三中全会、四中全会が提出した2020年までの改革任務を達成できれば中国は『中所得国の罠』を回避できるが、そこでの最大の難題はデレバレッジ(債務圧縮)を進められるかにある、これ以上レバレッジ(債務の積み上げ)を重ねてはいけない、さもないと債務危機が爆発したときに手の打ちようがなくなる」と述べたという。これが2015年に相応しい現状認識であり、そう考えることによって初めて、なぜ習近平政権が成長率を進んで落とそうと苦労しているのかが理解できると思う。
 
  最後に、丸川教授が拙著「終焉」を「中国経済が崩壊すると論ずる著作」だと紹介した点に抗議したい。私は中国経済の先行き悲観派として知られているが、同時に「中国経済がいまにも崩壊する」といった極端な見方は、これまで一度も採ったことはない。
  批判を受けた「終焉」においても、「『中国高度成長』の時代が終焉したことは疑いない」が、「幸か不幸か『官』が経済を強力に掌握しているので、急に『崩壊』する可能性は低い」(241頁)とはっきりと断ってあるのである。
  私は経済学を専門に修めたことも学問的なトレーニングを受けたこともないし、批判を受けた「終焉」も近著「巨龍の苦闘」も「学術書」の体裁は成していない。そんな本を丸川教授が取り上げてくれたことは多とするが、批判する以上は、一度は最後まで目を通してからにしてほしかった。





 

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