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の批判:津上の人口予測を採用しても、国連の人口予測を使った筆者(丸川)の予測と年率0.1%しか違わないという点について

「東大丸川知雄教授の批判に応える」の第4回目です



  丸川教授は「津上の人口予測の数字を表序2の『楽観シナリオ』に当てはめると、2011−2020年のGDP成長率は年7.8%、2021−2030年は年7.0%となる。結局、国連の人口予測を使った筆者(丸川)の予測と年率0.1%しか違わないのである」(16頁)と書いている。
  一見すると私の見方に対する強力な批判であるように見えるが、それは丸川教授の「楽観シナリオに当てはめる」からそうなるだけである。教授の楽観シナリオの前提を改めて列挙してみよう。
    i) 全要素生産性は2011−2030年にわたって、1995-2010年の平均伸び率であるGDP成長3.5%分の成長をもたらし続ける
    ii) 資本は2011-2020年は8.0%、2021-2030年は7.0%のペースで増加し続け、資本生産弾力性も2011−2030年にわたって2000-2010年平均とほぼ横ばいの0.54を維持する。この結果、資本投入は2011-2020年はGDP成長4.3%(8.0%×0.54)分の成長、2021-2030年はGDP成長3.8%(7.0%×0.54)分の成長をもたらす
    iii) 労働投入は2011−2030年にわたって、年率0.3%ずつ減少を続けるが、労働生産弾力性は0.46であるので、GDP成長に対する影響は-0.1%(-0.3×0.46=0.138)に止まる
  i) については、まず年率3.5%分の全要素生産性の伸びを記録したとされる1995-2010年という時期は、中国経済成長の黄金時代、今から振り返ればゼロからの出発に近かったことを想起すべきである。中国が「世界の工場」に出世して、1億人以上の農民が内陸から沿海部に職種転換したこと、インフラの整備が飛躍的に進んだこと、大学進学率が一桁から30%以上に増加したことなど、どれを取っても「別の国に生まれ変わる」ほどの大変化だった。「限界効用逓減」ではないが、その劇的な変化と同じマグニチュードで全要素生産性があと15年改善し続けるというのは、現実的な仮定とは考えられない。
  さらに、直近の全要素生産性の伸びが大きく落ち込んでいるという現実を直視すべきことは既に論じたとおりである。いま進めている三中全会改革、とくに規制緩和などが順調に進めば、この全要素生産性が回復することが見込めるが、国有企業改革の先行き等を見るにつけ、先行きは予断を許さない。今後の全要素生産性の行方は改革が進展するかどうか次第であり、「全要素生産性は従前どおりの伸びを続ける」という仮定は、「改革は万事うまく行く」という仮定に立った「高度成長持続先に在りき」の立場に等しいと感じられる。
  ii) については、先述したとおり資本が年率7〜8%で増加し続けるという点についても、資本生産弾力性が2000-2010年平均のレベルを維持するという点についても、同意できない。
  ちなみに、丸川教授が「資本生産弾力性はこれまでどおり」と仮定することは、私には荒唐無稽と感じられるが、一つの「立場」ではあろうと思う。これに対して、共著者梶谷教授は、本書で「最近の投資効率の低下」を警告しているのに、「より慎重に」推計した資本生産弾力性は0.4と、2000-2010年平均のレベルから25%低下する程度だという(表序-2)。本書には何の「積算根拠」も示されていないし、先行研究からすれば半分以下の0.2台に落ちていてもおかしくないと思えるが、これはどこから来る数字か、ご教示願いたいものである。
  iii) の労働投入について、私はいまから約10年後、2020年代後半に本格化する影響に注目している。仮に資本生産弾力性が大幅に落ち込む結果、労働生産弾力性が0.7以上になるとすると、年率-0.99%の労働人口減少は年率0.7%近いGDP減少をもたらしうるのである。「それでもコンマ以下の影響に過ぎない」と言うなかれ。丸川教授の言う7%以上の成長のほとんどの部分は上述したとおり、実現するという保証はないのである。また、何処の国であろうと、毎年全要素生産性を1%ずつ改善することは容易なことではないのである。




 

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