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ブログ 津上俊哉
の批判:潜在成長率の積算根拠を示さずに5%前後としていることについて

「東大丸川知雄教授の批判に応える」の第2回目です




  たしかに明確な積算根拠があって潜在成長率を5%前後とした訳ではないことは、私も認めるが、丸川教授にも「教授の推計はどれだけ根拠があって、科学的なのか?」を問いたい。
    i) 全要素生産性の今後の見通しについて
  先述したとおり、教授は「1995−2010年の全要素生産性の伸びが今後もそのまま続く」と仮定しているが、最近の全要素生産性に関する推計結果は、いずれもこの仮定を裏切っている。
  図は全米産業評議会(The Conference Board)及びアジア生産性機構(Asian Productivity Organization)の推計である。昨2014年に発表されたこの二つの推計によると、中国の全要素生産性の伸びは2010年以降どんどん小さくなっている。とくに全米産業評議会の推計によれば、2013年にはGDP成長のほとんどを資本投入だけで占めるという異常な結果になっているのだ。生産関数の推計方法は一つではないから、異なる推計があってもおかしくはないが、丸川教授は「年率3.5%分の改善が続く」という仮定を支持する別の推計をされたのであろうか。
近時の中国経済成長の質の低下

    ii) 資本投入とその効果の今後の見通しについて
  資本投入による成長貢献についての丸川教授の仮定は、 崚蟷饂餠發呂海譴らも豊富に供給されるため、資本の増加率はゆっくりと下がる程度」(11頁)、及び◆崔羚颪砲麓益率の高い投資機会はまだ少なくな」いので(13頁)、投資生産弾力性もほぼ横ばいを維持する(表序-1及び2、注)の二つである。
  しかし、「投資資金は今後も潤沢に供給される」とする根拠は何だろうか。公式統計に従えば、2014年の固定資産投資完成額は、既に年間50兆元を越えた。これを教授の想定どおり2020年まで年率8%、2030年まで7%ずつ伸ばせば、毎年毎年必要となる資本金額がその年のGDPを上回る日が来るだろう。中国の投資は、「今後も伸びていく」には、あまりにも巨大になりすぎているのである。
  さらに、実はそこに潜在的な不良債権がそうとうな量潜んでおり、やがては何らかのかたちで(金融収奪といった、見えない間接的な形を含む)、毀損した価値の損失処理を迫られることを考慮するなら、「投資資金はこれからも豊富に供給される」との仮定は、もっと疑わしくなる。
  また、投資生産弾力性が2000-2010年平均とほぼ横ばいの0.54を維持するとの仮定は、多くの識者に加えて共著者である梶谷教授も指摘している「最近の投資効率の低下」という現実に反している。
  「過去のトレンドは将来も持続する」という考え方に立つことには、それなりの合理性があるという反論があるかも知れないが、それに対しては、昨年ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授が同僚プリチェット教授との共著で発表した論文「Asiaphoria Meets Regression to the Mean」(アジア楽観論は平均への回帰に遭遇する)を挙げておこう。
  この論文は、167カ国について1950?2011年までの経済データを網羅した「Penn World Table(PWT)」というデータベースを用いて、\こΤ胴颪これまで経験してきた経済成長は「年率2%成長」が平均であり、これを大きく超える、たとえば6%以上の成長が10年以上にわたって持続することは極めてまれである」、△海里茲Δ福崢狭眄長が持続する期間は平均すると9年間であり、この期間が終わった後は平均して4.65%の成長率低下を経験する(中国の場合は4%前後になる)といった結論を導いている。
  サマーズ教授らの立論の根底にあるのは、あくまで統計分析であり、なぜ中国やインドも世界の平均に従うと言い切れるのか、そこに例外を許さない何かの力が働くのかどうか、は論文を読んでも見えてこないのだが、この研究結果を報じた英紙「Financial Times」の記事は「『足元の成長トレンドに基づけば…』というセリフを聞いたら、一度疑ってかかった方が良さそうだ」と結んでおり、そこについては私も同感である。

注:表序-1によれば、2000-2005年の資本増加率10.7%に対して、丸川教授が推計する資本の成長寄与度は5.9%分とあることから、採用されている投資生産弾力性は0.55。2005-2010年は同様に6.7%に対して11.7%とあることから、投資生産弾力性は0.57。表序-2で丸川教授が「楽観シナリオ」で用いた投資生産弾力性0.54(1−労働生産弾力性0.46)は、概ね過去の投資生産弾力性が横ばいで維持されるという仮定に基づくと考えられる。




 

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