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続々報 「経済再過熱の兆しを警戒する中国」

1-6月(上半期)の経済統計が出揃いました


                   続々報 「経済再過熱の兆しを警戒する中国」

 6月26日の弊サイトで、「経済再過熱の兆しを警戒する中国」 の続報として、5月の統計速報を受けた見通しを説明したが、今週、6月(上半期)の統計数字がほぼ出揃ったので、 「続々報」 をお届けする。


 GDP成長率
第 1四半期 10.2%
第 2四半期 11.3%

 貿易黒字
4月 104.6億USD(前年同期比+136.7%増)
5月 130.0億USD(前年同期比+ 44.4%増)
6月 145.0億USD(前年同期比+ 49.0%増)

 都市部固定資産投資
1-4月 1兆8006億元(前年同期比+ 29.6%増)
1-5月 2兆5443億元(前年同期比+ 30.3%増)
1-6月 3兆6368億元(前年同期比+ 31.3%増)

 居民消費価格指数(CPI)
4月 前年同期比+1.2%増
5月 前年同期比+1.4%増
6月 前年同期比+1.5%増

 マネーサプライ(M2)
4月 31兆3702億元(前年同期比+ 18.6%増)
5月 31兆6710億元(前年同期比+ 19.1%増)
6月 32兆2800億元(前年同期比+18.4%増)

 金融機関人民元貸出増加額
1-4月 20兆9556億元(前年同期比+15.5%増)
1-5月 21兆1650億元(前年同期比+16.0%増)
1-6月 21兆5300億元(前年同期比+15.2%増)


 (1)前回「続報」で予想したところであるが、4月から再過熱防止の手立てを講じ始めたとはいえ、それほど即効性を期待できる訳ではない。マネーサプライと金融機関貸出額の伸びがやや低下したのはやや朗報としても喜ぶには早い。とくに、四半期のGDP成長率は過去10年間の最高を記録、固定資産投資の伸びも前月をさらに上回る伸びを示しているなど、状況は依然楽観を許さない。
 (2)これに対して人民銀行は市場での流動性回収を一層強化している。7月14日、去る5月に一度実施した特定銀行数行への指名売却方式の市場操作(売りオペ)で再び1000億元の資金を回収したほか、昨21日には6月に引き上げたばかりの金融機関の準備金比率を更に0.5%引き上げ8.5%にすることが発表された(8月15日施行)。
  中国では、 「日本のコール金利や米国のFFレートのように中央銀行が直接操作できる金利指標が未だないため、利上げよりも流動性の回収の方が実効性がある」 由であり、上記の対応はこの考え方に沿ったものに見受けられるが、メディア上では、今後の展開如何によっては、遠からず 4月に続き再度の利上げが決定される可能性があるとの見方も報じられている。
 (3)関連する動きとして、昨夏の外為制度改革からちょうど1年が経った昨21日、人民元が一時、1USD=7.9815元を付けて最高値を更新した(終値は7.9897元)。切り上げ後の上昇率は累計で1.6%にとどまるが、20、21の両日だけで0.26%上昇した(この項、22日付け日本経済新聞による)。
  また、「経済再過熱の兆しを警戒する中国」で、外為市場でマネーの 「入るを制する」 よりも 「出るを計る」 政策の例として触れた、対外証券投資(QDII)の奨励についても動きがあった。昨21日、国家外為局が 「中国銀行、工商銀行及び(香港)東亜銀行の3行を対象に、合計48億USDの運用枠を初めて批准した」 旨を発表したのだ。他の金融機関も批准を得ると対外投資の規模は100億USD近くなると見られている。月間200億USD程度のペースで行われているドル買い介入と比べると微々たる規模ではあるが、外為市場の需給不均衡を緩和するうえで一歩前進ではあろう。
 (4)次なる焦点は固定資産投資、とくに 「土地供給のバルブ」 に相当する土地管理制度の規制管理強化策の行方だ( 周其仁教授コラム「ミクロ・コントロールは願い下げ」を参照 )。秋までには土地の払い下げや譲渡、地目変更等に関する規制制度の全面改正と権限の中央集中などの措置が実施されると思われ、行方が注目される。
 (5)今回の統計数字発表に関しては、かなりの危機感を以て報道された前月に比べてメディアが平穏だ。ゲスの勘ぐりかも知れないが、「大騒ぎしないように」 という報道統制の気配を感じた。しかし、表面上大騒ぎにはなっていないにしても、政府部内の憂慮は依然として大きいはずだ。
  前回も触れたように、中国では通貨金融当局以外の経済官庁や党・政府の上層部が過剰流動性に由来する現下の経済過熱問題について十分理解しておらず、そのせいで政府部内でなかなかコンセンサスが作れないように感じられることがしばしばだ。今回の難局を機に、今後の人民元引き上げや利上げ等の課題についても関係各方面の認識が深まることを願いたい。

                                  (平成18年7月22日記)




 

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