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ブログ 津上俊哉
四川地震遭難者への黙祷

いま、仕事で江蘇省蘇州市に来ています。やはり、来てみないと分からない現地の雰囲気というのはあるものです。今日行われた黙祷に参加しながら、考えたことを書きます。


                        四川地震遭難者への黙祷


  仕事で江蘇省蘇州市に来ていますが、今日 19 日、中国全土では地震遭難者に対する黙祷が行われ、私も関係先の社員一同とともに 3 分間の黙祷を捧げました。しかし、聞いて意外だったのは、みな 「こんな黙祷は経験したことがない」 と言ったことです。

  国民を大々的に巻き込む運動なら中国は近代以来何度も経験しています。救国、抗日、文革等々。それらはたいてい憎むべき 「敵」 を作り込んだ政治運動であり、宣伝の結果でした。しかし、今回は多くの人命が喪われたという人道問題で、「敵」 はいないのです。
  災害について情報統制をしないことは、2003 年 SARS 騒動に教訓を得て、最近ようやく慣行化しつつあることです。つい先日も大雪害があり、多くの報道が行われましたが、このときは重大な人命被害は出ませんでした。今回これだけの人命が喪われ、被災者が苦しみ、嘆く様を国民にリアルタイムで、ほぼありのまま伝える、13 億国民は報道に気を揉み、心を痛める・・・考えてみれば、これまでの中国に恐らくなかった光景です。国民挙げて犠牲者 (数は膨大でも庶民たち) に黙祷を捧げる行為は、たしかに中国の歴史始まって以来のことかもしれません。

  今回の地震では他にも 「初めて」 の出来事があったと感じます。物量にもの言わせた軍や政府の救難対応ぶりや、全国から殺到する救援の物資と募金 (既に 80 億元 ≒ 1200 億円を超えた由) には驚かされました。今後課題となる罹災者の生活支援などになると、日本ほど手厚いことはできないでしょうが、過去の大災害時になかった 「豊かになった中国」 を感じました。
  今回比較的賞賛されているのは、装備面も含めて軍の災害派遣が実力を示したこと、通信の復旧が移動通信を中心に迅速だったこと、全国各地からの医療関係者派遣が迅速だったこと (当地蘇州からも相当多くの医師・看護婦が急派された由) 等です。2 月の大雪害に続いて今回の大震災と、試練が相次ぐ中で中国の 「危機管理」 体制も練度が向上しているようです。
  そういう体勢なり実力なりが備わりつつあることと、情報を統制しないこととは、実は裏腹の関係にあります。国民の不満を呼ぶような大失態はしでかさないという自信がなければ、政府や共産党はやはり情報を厳しく統制しようとしたでしょう。意識する、しないに関わらず、こういうことが存外、対応に当たる政府の態度を左右するのだと思います。

  報道を受け止める国民の側にも変化があります。犠牲者や被災者に関する膨大、かつ、痛ましい報道に接して、みな沈痛な面持ちながらも不思議な連帯感が中国社会を包んでいます。さきの聖火リレー妨害騒動では 「敵」 を伴う nationalistic な団結ムードが昂揚したばかりですが、今回は 「敵」 を伴わない、世界も共感できる patriotic な (祖国愛、同胞愛的な) 連帯感です。これも過去にあまり経験のない出来事の一つでしょう。

  ご不幸の最中ではありますが、嬉しく感じたのは日本が派遣した救援隊の活動を巡る好意的な報道ぶりです。もっと早く現地に来られていれば生きて助け出せる被災者がいたであろうに・・・という点は残念ですが、疲労と戦いながら昼夜敢行、捜索・救難活動を続ける日本隊の仕事ぶりに、同行する中国記者が 「真面目で、勤勉、一縷の望みも捨てない仕事ぶりに強い感銘を受けた」 と報道していました。胡錦涛主席訪日を済ませたばかりの中国の政治的配慮も働いてのことでしょうが、報道の先には一般大衆がいます。60 余名の日本レスキュー隊員は救難活動だけでなく 「不言実行」 する友好大使としての役割も立派に果たしたと思います。本稿を書いている途中で 「撤収決定」 の報に接しましたが、「本当にご苦労様でした」 と言いたいです。
  事柄の性格上望むことではありませんが、もし将来、日本で大災害が起きたときに、中国では 「四川地震の恩を返すときが来た」 ということになり、「派遣される救難隊員は中国の名誉に賭けて、四川の日本人に負けない仕事をしてこい」 という流れになる予感がします。
平成20年5月19日 記




 

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