周論文 「国際通貨体制の改革」 の要旨
? 一主権国の通貨が世界基軸通貨の役割を担うことは無理がある
自国金融政策の安定的な運行と世界経済への安定的な流動性供給は両立しない。現行国際通貨体制は弊害が利益に勝ると言うべきであり、世界の側も発行国も代償を払っている。
? 特定国と無関係で、価値を長期的に安定できる超主権的基軸通貨を目指すべき
国際通貨体制改革は、特定の国の経済の状況・利益と無関係で、価値の長期的安定を維持できる国際基軸通貨の創造を目指すべきである。安定的な発行基準を持つ超主権的な基軸通貨の理想はケインズが提唱した “Bancor” のような通貨だが、当面はSDR (Special Drawing Rights) の機能拡充を図ることが現実的である。
? SDRの使途、保有・流通を拡充すべき
具体的には、SDRが政府あるいは国際組織間の国際決済にしか使用できない現状を改め、国際貿易・金融取引の公認された支払手段とする、国際商品価格のSDR建て表示の推進やSDR建て資産 (債券等) の普及などが考えられる。民間投資家にもSDR資産の保有・売買を認めることにより、現行基軸通貨秩序を徐々に置き換えることも可能になるし、各国が個別に保有する外貨準備を国際機関で集中的に管理運用することを通じて、外貨準備を節約し、国内経済成長にもっと多くの資金を振り向けることも可能になる (注1) 。
? IMF自身のガバナンス改革も必要
世界経済の現状に合わなくなっているIMFのガバナンス・機能を改めて、発展途上・新興経済国の発言権・代表権を大幅に高める、経済モニター機能を向上させる等の改革を進めるべきである。