中国は世界に率先して 「有事」 型経済政策を“exit”できるか
グーグル撤退事件を契機に、今後の世界と中国との付き合い方を論ずるつもりでしたが、これが想像以上の 「難物」 で書くのは簡単ではありません。ということで (笑)、今日は代役、「経済定点観測」 です (こっちが本ブログの主役か…)
中国は世界に率先して 「有事」 型経済政策を“exit”できるか
2009年通年の経済統計の発表始まる
昨年12月分を含む2009年の経済統計の発表が始まった。統計局発表のメインの数字は今週木曜21日発表の予定だが、先週15日、皮切りに先週金融統計が発表された。
M2は前年末対比で27.7%の伸び、M1 (現金+当座預金等) は32.4%の伸び (前年末の伸率より23%強上昇) と、11月より2%強低下したとはいえ、依然空前の伸びを示している。
金融貸出は通年で9兆59百億元、10兆元には達しなかったものの、昨年初めに計画した5兆元のほぼ2倍出た。
そして、9月の数字を最後に暫く発表のなかった外貨準備高が発表された。年末で2兆3992億ドル (前年対比23.3%増)、この1年間で4531億ドル、第二位の日本の外貨準備の半分近い額増えた勘定だ。(もちろん米ドルだけ買っている訳ではなく米ドル換算という意味だが)
2008年11月の 「4兆元対策」 発表以来、中国は史上空前の金融・財政総動員を行い、世界に先駆けて景気恢復を実現した。年間のGDP伸率が公約の8%を上回ることは疑いなく、4Qは10%を超える成長になったとも予想されている。
この 「輝かしい」 実績の背景を物語るグラフを紹介したい。上記の金融統計からとった数字だ。年間9兆元の貸出増とは邦貨に換算して約120兆円という膨大な規模だが、このグラフから見て取れるのは以下の3点だ。
(1) 事業法人向け中長期ローンが激増した (5兆元≒66兆5千億円)。主な借り手は4兆元公共投資を担った事業インフラ系国有企業だ。
(2) 年前半、「融資枠確保」 を狙った手形貸出 (点線囲い) が急増、後半は期限到来とともに減少した (短期/中長期ローンに振り替えられたものが多い)
(3) 消費者の中長期ローンが急増した (1兆7千億元≒22兆円)。2Q以降、不動産開発商をして 「真冬から一気に盛夏が来た」 と言わしめた住宅ローンの大ブーム (及び自動車ローン)だ。
ここに2009年の中国経済恢復の縮図を見ることができる気がする。第一に公共投資主導、これは言うまでもなかろう。第二に年前半は株式、後半は住宅に顕著だった資産価格上昇。過剰流動性の氾濫を物語るものだ。第三に住宅、自動車、家電などの堅調な消費だ。
今年の中国経済の課題は何か。金融財政総動員で成功を収めた 「有事」 型経済対策から、平穏に “exit” できるかどうか、とくに 「過剰流動性」 が資産バブル、物価高騰につながるのを防ぐ一方で、過度な引き締めで景気の急落を招くのも防ぐというナロー・パスを歩めるか否か?だと思う。目下成長の動きは底堅く、今年いっぱいは成長息切れの心配をしなくても済みそうだが、足許にはいろいろな不安要素が芽を出しつつある。(本稿続く)
平成22年1月17日 記
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