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中国の 「58兆円内需拡大策」 ショート・フォローのフォロー

前回触れた噂、「金利と準備金比率のダブル引き下げ」 が今夕ようやく発表になりました!


              中国の 「58兆円内需拡大策」 ショート・フォローのフォロー


  先週末のエントリーで書いた噂、「金利と準備金比率のダブル引き下げ (「双降」)」 が今夕やっと発表になりました。事前予想を裏切った点は、? 発表時期が4日遅れになったこと、? 引き下げ幅が通常の刻み0.27%の4回分、1.08%という空前の大幅になったこと、そして、? 準備金比率の引き下げに大手銀行と中小銀行の差が付いたこと (大手は1%ダウンの15%、中小は2%ダウンの14%に)です。
  発表時期のズレは、事前の噂があまり広範に流布したので、当局が 「乗せられ実施」 になるのを嫌ったということかと思います。引き下げ幅は先のイングランド銀行の利下げに倣ったのかもしれませんが、「0.81% (3回分) なら 『或いは?』 と思ったが、4回分とは全く予想していなかった」 という専門家のコメントがありました。準備金比率の引き下げ幅の差は中小行が得意とする中小企業向け貸出余地を重点的に増加させることによって 「中小企業重視」 の姿勢を鮮明にするという狙いでしょう。

  以下、今回もショートコメントになりますが、3点申し述べたいと思います。

  第一、景気急減速に脅える中国経済にとって、今日の発表は疑いなく 「好消息」 であり、明日の市場は株も債券も大きく上げるでしょう。しかし、この下げ幅は同時に、中国政府が今後の景気の行方を如何に深く憂慮しているかの現れでもあります。
  ちなみに先月のエントリ、中国:沿海中心に経済成長に急ブレーキで9月単月の電力消費が急落した話を書きましたが、数日前に10月分の数字が発表になりました。全国・全業種総計で対前年同月比▲2.7%、重工業用だけをとると、実に▲12%の大幅減少でした。とうてい 「9%成長経済」 の数字とは思われません。いまや鉄鋼業では3割以上の減産が当たり前、おかげで市況急落は石炭やコークスなど原材料にも及んでいる由、秋以降の経済が如何に激しく “nose dive” したかを如実に物語ります。「4兆元」 対策は打ち出されましたが、来年上半期、成長率が体制の死活線と言われる7%をいっとき割り込むと懸念する悲観的見方もかなり拡がっています。

  第二、今回の利下げで期間1年の基準貸出金利は6.66%から一気に5.58%まで下がりますが、「これで打ち止め」 にはならないでしょう。さすがに下げ幅が大きかったので、これまでマーケットに流れていた 「年内に利下げ2回」 ということになる可能性はやや遠のいたと思います。しかし、以前のエントリで照会した 「2009年末までに予想される利下げ幅は216basis」 という専門家の見方からすれば、今回の利下げで一気にその半分が実現した訳ですが、下げ余地はまだ半分残っているということです。来年前半の “nose dive” の具合によっては、第一四半期中に再利下げになる可能性が十分あると思います。“nose dive” で冷え切ってしまった民間の借入意欲はこの過程でようやく回復してくると思われます。

  第三、景気急落の原因の半分は「金融危機」由来ですが、残り半分は“home made”、昨年来のマクロ経済引き締めと一連の外部コスト吸収政策 (人件費や環境対策費など企業のコストを上昇させる政策変更がいちどきに押し寄せた) によるものです。外需の低迷は中国だけの手では如何ともしがたいですが、“home made”の景気減速については手の打ちようがあります。
  再三述べてきたとおり、いまの中国経済は景気刺激の手段と余地が他国より格段に大きいことが強みです。上で “nose dive” ばかり強調したかもしれませんが、今日の発表によって出遅れていた金融緩和も4兆元の財政出動と足並みを揃えることになる結果、私は量的な成長については “confident” になることができました(結果的に今回も政府自らが戒めてきた 「大起大落」 を再演してしまうことにはなりますが)。ただ、成長の 「質」 は別論です。これについては再論します。

  という訳で、今日のところはショートコメントまで。
平成20年11月26日 記




 

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