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中国の利下げ (定点観測クイック・フォローアップ)

昨14日付けで 「政策軸を 「景気振興」 の方向にスウィングさせる可能性は見えない」 という見方をポストしたら、わずか一日で 「中国が利下げに踏み切った」 というニュースが飛び込んできました。一瞬、「あ痛ぁー、読み違えちゃったか!」 と汗が出ましたが・・・


                中国の利下げ (定点観測クイック・フォローアップ)



  昨14日付けで 「政策軸を 「景気振興」 の方向に全面的にスウィングさせる可能性は見えない」 という見方をポストしたら、わずか一日で 「中国が利下げに踏み切った」 というニュースが飛び込んできた。一瞬、「あ痛ぁー、読み違えちゃったか!」 と汗が出た。

  当初速報された内容は ? 貸出金利の0.27%引き下げ、? 預金準備率の1%引き下げの2点だったが、よくよく内容を見てみると、少し込み入っている。
  第一に、利下げは1?3年の貸出金利は0.27%引き下げなのだが、6ヶ月貸出は0.36%、逆に5年貸出は0.09%の引き下げと、ずいぶん短期貸出の利下げに傾斜をつけた内容になっている(預金金利は据え置きのまま)。
  第二に、預金準備率の引き下げも4大銀行 (工商、農業、中国、建設) 及び交通銀行、郵貯銀行は引き下げ対象外、要するに預貸シェアの7割以上を占めるメインストリーム行は変更なしで、中小金融機関だけに適用される由だ (でも、これでは新規貸出に回せる枠があまり増えない)。
  以上に対する解説として、本措置は中小企業の資金難 (とくに短期資金) の解決に狙いがあり、背景としては、企業がコスト高と転嫁難に苦しんでいる時世だというのに、大手14銀行は上半期決算税引き後利益が合計2300億元、対前年同期で60%以上も伸びたこと (当然、批判と怨嗟の声が挙がり、儲け還元の要求が出る)、準備金比率引き下げから除外される大手6行以外の中小金融機関は貸出の1/3?1/2が中小企業向けであるであることが挙げられている。
  要するに、既に予告されていた 「中小企業向け」 配慮の範囲内であり、「物価と景気の両睨み」 の政策スタンスを変更するものではなさそうだ。

  派手な 「読み違え」 をした訳ではなさそうだと分かって、少しホッとしたが、そう分かると疑問が湧いてくる、「なぜ、今の時期に、これなの?」 ということだ。
  本15日はリーマンが逝き、メリルが買収されて名前が消えると決まり、AIGが増資引き受け手を見つけられずに連銀特融に走るという金融史上に残る一日だった。しかも中国も中秋節でお休みだ。そのタイミングだったので、最初はてっきり “Global Financial Turmoil” 対策なのだと思った。放っておけば、明日の株式市場は2000のインデックス大台を大きく割り込む展開が確実なので、休日にもかかわらずサプライズを狙って急遽発表したのだろうと。しかし、上記内容ではサプライズとは言い難く、むしろマーケットでは 「失望売り」 が出かねない。

  イマイチ狙いが読めない・・・もう少し様子を見て、近いうちに再フォローします。


追記 今日夕方、為替市場ではこの速報が流れるや、それまでの円高傾向がかなり押し戻されたという。中国は資本勘定を開放していないし、為替も強力な管理の下に置いたままだと言うのに、マーケット関係者はそれほど日中経済の連動性を意識しているのかと感じ入った。ここでも霞ヶ関とマーケットの距離は大きい。
平成20年9月15日 記




 

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