中国のGDPが日本の半分になった日
あまり注目されていないニュースですが・・・
中国のGDPが日本の半分になった日
昨年末時点で日本の1/3しかなかった中国のGDPが12月20日、突然日本の半分に到達した(笑)。
理由は二つある。最大の理由は、中国が04年末を基準時として第1回の経済国勢調査(原文:「経済普査」)を実施した結果、04年の速報ベースのGDPが16.8%上方修正され、邦貨換算で33兆3千億円増加したことである(去る20日、国家統計局が記者会見で明らかにした)。第二の理由は為替レートだ。1年前の円ドルレートは103円、対人民元レートは12.45円だったが、今年は7月に例の人民元の「変動相場制」移行、2.11%切り上げが発表され、かつ、円が対ドルで下落したため、いまは同じ数字が117円と14.49円、円は対人民元でこの1年間に約15%下落している。以上の結果、中国の04年GDP確報値は15兆9878億元(邦貨換算231兆6632億円)となり、同年の日本の名目GDP、496兆1970億円の46.7%、つまり、ざっと半分に到達した次第だ。
中国の統計は当てにならないことで有名で、しばしば笑い話のタネにされるが、今回の改訂は笑い飛ばせないものを持っている。経済国勢調査は不正確な統計の現状を改善するために並々ならぬ覚悟で行われた。全国で300万人の調査員が養成されて調査に従事、集められた回答表は3000万通以上に上ったという。国家統計局はこれにより第2、第3次産業の全国企業データベースが完成したと誇っている。
より注目に値するのは改訂の中身だ。中国は永く第3次産業の発育不全に悩んできた。先頃発表された「第11次五ヶ年計画」でも、第3次産業の発展は「持続可能な成長」戦略の重要な一環として位置づけられている。教育、医療など市場経済化が遅れた領域が多いこと、通信や金融など大型国有企業による寡占の弊害が顕著な現状に照らせば、第3次産業の発育が思わしくないことは頷ける。
しかし、そうは言っても、第3次産業のGDPシェアが30%ちょっとしかないと聞くと、何かの間違いだろうと言わざるを得ない。「外国人が目にする大都市だけが中国ではない」とは言え、近時の中国中の商店、飲食店、不動産業、物流業などの繁栄ぶりを見ると、とりわけ新興私営企業が活躍する第3次産業の統計捕捉率に問題があることは誰に目にも明らかだった。
今回の発表では、個人経営者(個体戸)や私営企業の多い交通・運輸・倉庫・通信業、卸・小売・飲食業及び不動産業の3業種で邦貨換算22兆円のGDP増加が認められたとされている。実にトータルの上方修正額の2/3がこの領域に由来している。発表はこのほか、コンピュータ・サービス業、ソフトウェア業、ネット・衛星伝送業、娯楽業、リース業、ビジネス・サービス業などの新興サービス業及び製造業や建築業に付随し従来は2次産業にカウントされるか又は捕捉されていなかった関連サービス業の捕捉にも務めたことに触れている。
以上の結果、産業3分類に基づく各産業のGDPシェアは、第1次産業が15.2%から13.1%へ、第2次産業が52.9%から46.2%へそれぞれ下がり、第3次産業のシェアは31.9%から40.7%に上昇した。まだ漏れがある気もするが、一歩前進であることには違いない。
計算してみて、暫し感慨に浸った。私が北京に駐在していた90年代末、中国のGDPは日本の1/5だった。最近でもざっと1/3というのが通り相場だった。それが突然増加するところが如何にも 中国だが(笑)、ついに日本のざっと半分まで来た訳だ。香港を加えるとどうなるか計算したことはないが、中国がGDPで日本を抜く日が来るのは何時になるだろうか。今後人民元レートが上昇すれば、その日の到来は更に早まる。そのとき、我々日本人はどういう心構えで臨むのか、そこに備えた作戦を練ることが肝心だ。 (平成17年12月22日 記)
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